地域活動コラム
まちづくりインタビュー
2026年08月07日 [まちづくりインタビュー]
【後編】里山を次世代へつなぐ――名瀬谷戸の会が育む環境教育の輪

環境教育は子どもだけのものではない
名瀬谷戸の会では、子どもたちだけでなく、学校の教職員や企業に対しても環境教育を行っています。「身近にどんな環境教育が隠れているのか、遊び方を伝えています。
触ったり、匂いを嗅いだり、自然にはいろんな”お遊び”があるんです」
今では、教職員の間で口コミが広がり、依頼が絶えないのだそう。
企業との取り組みについてはこう語ります。
「企業ごとの理念や考え方があるので、それに寄り添う形で活動しています。企業からのサポートがないと成り立たない部分もありますが、お互いにWin-Winになる関係を目指しています」
支え合いが生む「ファイブ ウィンズ」
「産官学民+我々の5つでWinーWinになるんです」と語る田中さん。田中さんはそれを「ファイブ ウィンズ」と表現していました。
産官学民それぞれのゴールと、我々のゴールを目指すことで、互いに価値を生み出せる関係になるのです。
名瀬谷戸の会は、2025年11月に横浜市から環境活動賞大賞を受賞。審査委員長から「産官学民のハブ(産官学民を繋げる中心地点)になっている」と評価されました。さらに、2026年6月25日に環境大臣より「環境大臣賞 地域環境保全功労者表彰」を受賞されました。
名瀬谷戸の会は、ホームページやSNSでの発信はありません。
「企業によっては、我々の活動を色々と調べていただいた上で声をかけてくれるから、断れないんです」
また、会員の多くは現役引退した世代。
「現役時代のように責任を重く感じてほしくない。だから我々は”ささやかな有償ボランティア”として活動していて、報酬は交通費程度なんです。みんなはそれでいいっていうんですよ」
人と人とのネットワークと「ファイブ ウィンズ」の体制が、活動発展の土台となっているのでしょう。
次世代へつなぐ「先行投資」
名瀬谷戸の会での一番の課題について伺うと、「世代交代・後継者づくりがトッププライオリティ(最優先)」と話す田中さん。会員150名の多くが現役引退後のセカンドライフを送る世代ですが、近年は退職年齢が上がり、そこから新たに保全活動にチャレンジする担い手が減少していることを危惧しています。
そこで今後は企業との連携を軸に、現役の社員の方々に保全活動に参加してもらう仕組みを広げているそうです。
「現役世代や子育てを終えたパパ世代など、若い世代が保全活動にチャレンジするきっかけになってほしい」
田中さんは、20年後、30年後、50年後・・・と先の未来を見据えて「先行投資」を続けています。
印象的なエピソードをお話いただきました。
「里山での環境教育のあとに、ある小学生の女の子が『しんちゃん、私、会員になって保全活動をしたい』と言って本当に参加してくれるようになったんです。そして高校生になったその子は、『カナダに留学して里山の学びを深めたい』と相談しに来てくれました」
「そういう子を増やしていきたいんです。小学校時代の思い出が里山への学びの意欲や挑戦につながる。そうすれば、里山を永続的に残していくことができます」
「自慢の子なんです」と話す表情は、とても誇らしげでした。
自然が恩返ししてくれる感動
田中さんが活動で大切にしているものはどんなものなのでしょうか。「仲間への思いやりや連携が必要です。一人じゃ出来ない。会員150名全員に感謝している」
名瀬谷戸の会は、多様なキャリアを持つ会員がそれぞれの価値観を持ち寄って成り立っているのです。
こんな素敵なエピソードもいただきました。
森林再生プロジェクトの一環で、日の当たらない場所のマダケの皆伐や除草をしたところ、翌年、それまで僅かしか見られなかった希少種の野草が一面に咲いたのだそうです。
「みんな感動ですよ!」
「自分がやったことに対して自然が恩返ししてくれた。それがやりがいになるんです。それを体験してほしいんです。そういう感動を若い世代にも感じてほしい」
目を輝かせて語る田中さん。
除草という地道な作業の先に待つ感動こそが、活動を続ける原動力なのだと感じました。
人を育てることが、里山の未来へつながる
「ぜひ一度見学に来てほしい」パンフレットや写真だけでは伝わらない里山の魅力があります。
子どもたちの笑顔、仲間と力を合わせて自然を守る喜び、そして自然が返してくれる感動――。
人を育てることが、里山の未来を育てることにつながる。
田中さんが描くそんな未来を、ぜひ現地で感じてみてはいかがでしょうか。
団体情報
【団体名】名瀬谷戸の会
【活動エリア】名瀬の里山


