地域活動コラム
まちづくりインタビュー
2026年06月30日 [まちづくりインタビュー]
きこえない人と共に生きやすい地域を目指して――「きこえないママ ✕ まちプロジェクト」

きこえないママのために
きこえないママのために立ち上がった「きこえないママ ✕ まちプロジェクト」。その活動は今、聞こえる人も聞こえない人もつながれる場へと広がっています。
代表を務める松本 茉莉(まつもと まつり)さんに、活動への想いを伺いました。
ひとりの不安から生まれたプロジェクト
聞こえない当事者であり、4人のお子さんを育てる松本さん。長男を出産後、地域の子育て支援拠点へ足を運ぶものの、周囲とのコミュニケーションに悩み、次第に足が遠のいていったといいます。
「口の動きを見て話を聞くけれど、みんな子どもを見ながら話すので何を言っているのかわからなかった。『ゆっくり話してください』とお願いすることにも疲れてしまって、行かなくなりました」
地域とのつながりを持てず孤独を感じるなか、東日本大震災を経験。「このままでは子どもを守れない」と感じたことが転機となりました。
2014年、きこえないママと地域の人が安心して交流できる場として「きこえないママ ✕ まちプロジェクト」をスタート。長年温めてきた想いが形になりました。現在は毎月第2金曜日に上倉田地域ケアプラザで活動を続けています。
参加者を増やす難しさ
活動を始めたものの、参加者がなかなか増えない時期もありました。
育休中は参加していても復職を機に離れたり、コロナ禍はオンラインでの開催をしていたものの、コロナ禍以降は参加者が1名という月もあったそうです。
「聞こえない人はもちろん、聞こえる人や手話に興味のある人にも来てほしい。聞こえない人のことを知らない人にこそ知っていただきたい。知らないままでは広がらないと思うんです」
SNSで情報を得られる時代になっても、松本さんが大切にしたかったのは直接顔を合わせて話すことでした。
「私は生きた会話がしたかった。面と向かって対話を続けたかったんです」
つながりの中から生まれたもの
イベントをきっかけに興味を持った人や、参加者の紹介で訪れる人が増えていきました。「つながって、つながって、ここまで来ることができました」
活動の中で寄せられた悩みや経験をもとに、参加者同士でアイデアを出し合い、聞こえないことで困ったママたちの体験談や、簡単な手話表現、手話以外のコミュニケーションのコツなどを綴った小冊子が制作されました。
現在は希望者へ配布するほか、小児科や保育園、ケアプラザ、区役所などにも設置されています。(冊子の詳細、設置先については団体へお問い合わせください)
たとえ一人でも、この場所を開き続ける
活動の場では、聞こえない人も聞こえる人も同じテーブルを囲み、会話を楽しんでいました。「夢中になると手話の手が止まることもあるし、口の動きがわからないこともある。でもこの場では『もう一回言って』と気軽に言えるんです」
会場には筆談の用意もされており、手話ができなくても参加できる工夫がされています。
「難しく考えず、気軽に来てほしいんです」
話してみると、抱えている悩みはきこえる・きこえないに関係ないことも少なくありません。
誰もが自然体で話せるからこそ、新しい気づきやつながりが生まれています。
一方で、参加者を増やすことは今も課題です。
「聞こえない人が安心して話せる機会は多くありません。この月1回を楽しみにしている方もいる。だから、たとえ参加者が1人でも私は待っています」
その言葉から、この場所を守り続けたいという強い想いが伝わってきました。
活動を通して得た気づき
「今まで人前で話したり、まとめたりする経験をしてこなかった。でも、教わりながら続けてきました。今では、言わなきゃ始まらないと思っています」かつては「聞こえなくてすみません」と感じることも多かったそうです。
でも今は、「『私は聞こえないので、ゆっくり話してほしいんです』それだけ伝えればいいんだと教えてもらいました。」
以前よりもずっと子育てしやすくなり、自身も楽になったと話します。
誰もが安心して声をかけ合える地域を目指して
今後について伺うと、松本さんはこう語りました。「さまざまな団体とつながりながら、聞こえない人の存在を知ってもらう機会を増やしたいです」
目指すのは、聞こえる・聞こえないに関係なく、誰もが安心して交流できる地域です。
「どうすれば伝わるだろう」
そんな小さな工夫を重ねながら、「きこえないママ ✕ まちプロジェクト」は今日も人と人とのつながりを育んでいます。
団体情報
【団体名】きこえないママ×まちプロジェクト【Instagram】https://www.instagram.com/deafmama.machiproject/
【Facebook】https://www.facebook.com/kikoenaimama


