地域活動コラム
まちの未来をつなぐ人
2026年02月27日 [まちの未来をつなぐ人]
バリアフリー造形教室みんなのアトリエ白瀬綾乃さん〜絶望の淵から「表現」が救い出すもの〜

今回ご紹介するのは、「みんなのアトリエ」を主宰する白瀬綾乃さん。白瀬さんは34歳の夏、原因不明の難病「ギラン・バレー症候群」を発症し、一晩で全身の自由を失いました。動かなくなった体と、失いかけた自尊心の中で見つけた「アートの本当の役割」についての物語です。効率や技術が重視される現代社会において、なぜ「上手く描かなくていい」アートが、私たちの心を救い、生きる力になるのか。お話を伺いました。
ICUでの数週間、そして数ヶ月に及ぶリハビリ。聴覚と嗅覚だけが機能する静寂の中で、彼女を苦しめたのは身体の痛み以上に、「何もできない自分」への絶望でした。
「夫に迷惑をかけている」「私なんていない方がいいのではないか」そんな自己否定の渦中にいた彼女を救ったのは、自分と同じ、あるいは自分以上に重い障害を抱えながらも、懸命に生きようとする人々の存在への気づきでした。「自分はまだマシな方だ」という比較ではなく、「身体が不自由な人が、やりたいことを諦めずにすむ環境を作りたい」という利他的な想いが、彼女の消えかけた命の灯火を再び燃やし始めたといいます。
絵を描くことが好きだった白瀬さんは、認知症予防の「臨床美術」をベースに、独自のプログラムを開発、アートを通じて心のケアをする道を選びました。
現在は、発達障害や知的障害を持つ子どもから大人までが集まる造形教室を運営しています。
障害のある子もない子も一緒に参加できる場をつくろうという取り組みで、重度の身体障害がある子も、そうでない子も一緒に絵の具を飛ばし、色も人も自然に混ざり合う空間が生まれます。
「ここで友達にならなくてもいい。ただ、『こういう子が地域にいるんだな』と知るだけで、街で会った時の眼差しが変わる」。
とはいえ、重度の障害者が通えるバリアフリーな会場の確保、活動を支えるスポンサーの獲得といった課題は山積みです。それでも少しずつ実績を積み重ね、戸塚の地から輪を広げようとしています。かつて「死にたい」とまで思い詰めた彼女は今、誰かの「生きる力」を育むために精力を傾けています。
【メールアドレス】 ayano_atelier@yahoo.co.jp
【TEL】090-6502-2541
【オフィシャルサイト】https://ayano-minna.jimdofree.com/
※造形教室へのお問い合わせや出張講座のご依頼なども上記の連絡先で承っております
一晩で暗転した日常と、見出した光
当時、幼稚園に通う娘を育てる母親だった白瀬さんを襲ったのは、真夏の倦怠感から始まった異変でした。「夏バテかな」と思った翌朝、足に力が入らず、目の焦点も合わない。そのまま緊急入院となり、その日の夜には全身が麻痺し、自発呼吸さえ止まるという極限状態に陥りました。ICUでの数週間、そして数ヶ月に及ぶリハビリ。聴覚と嗅覚だけが機能する静寂の中で、彼女を苦しめたのは身体の痛み以上に、「何もできない自分」への絶望でした。
「夫に迷惑をかけている」「私なんていない方がいいのではないか」そんな自己否定の渦中にいた彼女を救ったのは、自分と同じ、あるいは自分以上に重い障害を抱えながらも、懸命に生きようとする人々の存在への気づきでした。「自分はまだマシな方だ」という比較ではなく、「身体が不自由な人が、やりたいことを諦めずにすむ環境を作りたい」という利他的な想いが、彼女の消えかけた命の灯火を再び燃やし始めたといいます。
介護の現場からアートの支援へ
退院後、白瀬さんは未経験から介護の資格を取得し、障害者施設での勤務を経験します。そこで目にしたのは、人手不足ゆえに「作業」としてこなされるケアの現実でした。排泄や食事といった最低限のことだけでは人生は満たされない、と感じます。絵を描くことが好きだった白瀬さんは、認知症予防の「臨床美術」をベースに、独自のプログラムを開発、アートを通じて心のケアをする道を選びました。
現在は、発達障害や知的障害を持つ子どもから大人までが集まる造形教室を運営しています。
「上手か下手か」ではない、唯一無二のアート
教室のルールに、「上手だね」と言わないこと、があります。出来上がった作品の完成度ではなく、「この色を選んだね」「最後まで筆を動かしたね」と、その子の言動やプロセスを徹底的に肯定することを大切にし、日常の延長線上で楽しめるように100円ショップや家庭にある新聞紙等の身近な材料を用いることも特徴です。また、「想像して描いてみて」と言われるとパニックになる障害特性に配慮し、手形を取ったり、新聞の文字を切ったりといった「具体的な動作」からアートが生まれる仕掛けを作るなどの工夫もされているそうです。
教室運営を越えて「インクルーシブ」の実現へ
白瀬さんは現在、自身の教室を越えて地域社会へと視線を向けています。特に情熱を注いでいるのは「インクルーシブアートイベント」の開催です。障害のある子もない子も一緒に参加できる場をつくろうという取り組みで、重度の身体障害がある子も、そうでない子も一緒に絵の具を飛ばし、色も人も自然に混ざり合う空間が生まれます。
「ここで友達にならなくてもいい。ただ、『こういう子が地域にいるんだな』と知るだけで、街で会った時の眼差しが変わる」。
とはいえ、重度の障害者が通えるバリアフリーな会場の確保、活動を支えるスポンサーの獲得といった課題は山積みです。それでも少しずつ実績を積み重ね、戸塚の地から輪を広げようとしています。かつて「死にたい」とまで思い詰めた彼女は今、誰かの「生きる力」を育むために精力を傾けています。
不自由さは不幸ではない社会を
アートによる表現は、単なる娯楽ではなく、自己を取り戻すための大切な営みであること感じます。「みんなのアトリエ」から発信される描く喜びは、不自由さは不幸ではない、ということを社会に広めていくエネルギーの泉源になっているように思います。白瀬さんが一旦は自分の存在価値を見失いながらも、誰かの生きる力を生み出すために奔走する姿に心を動かされました。教室情報
【教室名】バリアフリー造形教室みんなのアトリエ【メールアドレス】 ayano_atelier@yahoo.co.jp
【TEL】090-6502-2541
【オフィシャルサイト】https://ayano-minna.jimdofree.com/
※造形教室へのお問い合わせや出張講座のご依頼なども上記の連絡先で承っております


